[Day4]
前回の旅行記(4-2)
両脇に湿原を拝みながらチャリを漕いで霧多布の町に突入。ここからひたすら岬を目指します。
湿原センターから30分ずっと直進、町に入る時に一度だけ左折してまたしばらく直進。
この果てない一本道がザ・北海道です。
そして町に入ったあたりで急に霧が出てきました。
5分くらいチャリを漕いでるうちに気付いたら霧に包まれていた感じです。
人生で一番気楽なサイクリングから一転、めちゃくちゃ不安なサイクリングになりました。
これから岬に行くからには海が近い。ですが霧であたりの地形が分からないので、見えている水が川か河口か、はたまた湿地帯か沼か分からないのです。
とりあえずセコマで水を買って落ち着くことにしました。ついでにジュースも買っておきます。
店員さん達にはチャリで行くのかと驚かれましたが、そりゃみんな車で行くよね・・・
セコマを出て15分ほど走り、道が途切れた場所でようやく右折です。
ここからは登り坂が続くので気が重い。
僕に気付いたキタキツネが慌てて斜面を登っていきます。イヌ科の動物はネコ科に比べて斜面が苦手なイメージがありましたが、なんとかなるんですね。
バックパックがキツいなぁ
草原の真ん中を突っ走って行くのは良いとして、霧で遠くが見えないのです。
視覚的情報が制限されるのがこうも不安だなんて。
何より思考を惑わすのが、あたりに全く水辺がないのに明らかに漁に使うような物があるんですよね。
まぁ岬だから海は近い訳だし軽トラかなんかに乗せて海まで行くのでしょうが、視覚的には山中の国道を走ってる感覚なので頭がおかしくなります。
岬の手前に展望台があると聞いたので行ってみました。明らかに閉鎖されてますね。
トイレはまだ稼働してて駐車場は広いので、車で来てちょっと休むには使えるかも。
海を見下ろしてみました。
世にも不幸なできごと(オラフ伯爵が遺産目当てで子ども達を追い回すファンタジー)の映画にこんな感じの場所が出てきた記憶があります。
ここから5分くらい走ってようやく霧多布岬に到着しました。本当に怖かった・・・
ちなみに映画でオラフ伯爵を演じたのは有名コメディアンのジム・キャリー。
イエスマンやエターナル・サンシャインはほんと後世に語り継がれる名作ですよ・・・
霧多布岬はラッコとアザラシの観察スポットとして知られています。
まぁ霧に包まれ凄まじい風が吹き荒れる中で観察してる人はほぼ皆無でしたが・・・
地獄のような景色に意味不明な笑いが止まりません。
これまで国内外の色々な場所に生きましたが、ここまで香ばしい場所はそうありませんよ。
この悪天候の中、ラッコを観察する物好きな熱心なカップルと並んでしばし水面を観察。
アザラシらしき物は見えましたが、双眼鏡の使い方がよく分からずで真相は不明です。
宿の夕飯の時間もあるのでぼちぼち移動します。
明日は晴れるそうなので明日リベンジしましょう。
・・・と、ここで50mほど先の歩道に寝そべる黒い小さな動物を視認しました。
常々ヒグマを見てみたいと公言してますが、それはハイキング中に遠くの山の斜面にいるのを見たいという意味であって、こういう状況は求めてません。
いや絶対近くに母グマいるよな〜
でも引き返しても地獄の岬があるだけで何の解決にもならないし・・・
ここでボケっと佇んでる訳にもいかないので、家族や友人への感謝、好きな人に伝えられなかった思いを胸に覚悟を決めて通り過ぎることにします。
言うて親が来る前に漕ぎ去れば大事にはならずに済むでしょう。生きるも死ぬも天任せです。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
黒猫やんけ・・・・
温泉のゆうゆで冷や汗を流し
黒猫にビビってロスした時間を取り戻すべく、宿に向かって全力でサイクリングです。
霧は先ほどよりさらに濃く、霧の中でぼーっとボートが揺れており幽玄。
ここの人達はどうやって日常生活を送ってるんだ?
こんな霧が毎日出てたら危ないでしょうに。
橋を越えて右折したら宿まで4kmほど。グーグルマップにも出てきますし一本道なので迷いようがないのですが、目印となるものが一切ないので民宿っぽい建物を視認しては停車→発進の繰り返しです。
そしてこの道に入ってからやたらとエゾシカに遭遇します。恐らく50頭は見ました。
いつもは可愛い鹿も、霧の中でぼんやり揺れていると恐ろしいモンスターのよう。
鹿の群れが道路を横断して車を立ち往生させるし、キタキツネも普通にいるし、霧多布はとんでもない野生動物の王国だったみたいです。
そして遂に、サイクリングを始めてから4時間ほどで今宵の宿・霧多布里に到着しました。
北海道旅人宿の黎明期から存在する宿。リビングレジェンドと呼んで差し支えないでしょう。
夕飯ウメェぇぇぇぇぇ!!!
この宿、旅好きと話してる時に名前を出すと高確率で「ああ、寿司が出てくる場所でしょ?」と返ってくるくらい有名な美食の民宿なのです。
宿主もさすがに全盛期と同じようにはいかないのか寿司は封印されたみたいですが、コロナで定員が減ったことで少しずつ解禁されるとも聞きます。
今回は寿司はなかったものの、マツカワやシイラといった高級魚の魚に自家製スモークサーモン、ホッキの炊き込みご飯など大大大満足。
宿主家族や他の旅行者と談笑しながらの食事は、一人旅で寂しくなった心に滲みます。
旅人宿最高です。
さて、明日は霧多布岬リベンジ。そして道東最大の都市・釧路へ移動する日となります。
花咲線もハイライトの区間です。
岬も花咲線も晴れなきゃ話になりません。
頼むぞ!
つづく