旅は続いている。
とにもかくにも利尻富士に登頂、しかも登りについてはコースタイムよりかなり巻いてクリアしたので、これはもう胸を張って、「意外と余裕だった」と友人諸君に吹聴しても差し支えないだろう。
とはいえあれだけの山に登れば当然、ダメージ・フィードバッグはあるに決まっており、結局この日から1週間、いつもの2倍の時間をかけて階段を昇降する羽目になった。

利尻富士登山が文字通りこの旅の山場、ハイライトだった訳で、気持ちの面でも盛り下がるのは仕方ない。
よって、残りの旅程は観光控えめでのんびり、飯や会話を楽しむのに専念することにした。
手始めに、朝のフェリーで島抜けする「うみねこゲストハウス」ゲストのお見送りをする。

お見送り後は、セコマで買った惣菜の朝メシ。
食後のコーヒーはフェリーターミナル前のPortoで購入。

本日は宿で電チャを借りて観光する。
去年は島一周+4つの激坂という鬼畜アクティビティをこなしたものだが、流石にそんな体力は残っていないので、大人しく沓形との往復で済ませることにした。

島を一周する道道は去年、漏れ無く走っているので、今回は一々写真を撮ったりせず、海風を感じながら無心でチャリを漕いでいく。
対岸に見える礼文島が美しい。

左に利尻富士、右に礼文を眺めながらサイクリングするのは最高に贅沢だ。
この写真を撮ったのは11時13分。
24時間前はあの山のてっぺんにいたかと思うと、改めて達成感が湧いてくる。むしろ現実味が無い。

うみねこゲストハウスや鴛泊港が属する利尻富士町から、沓形を擁する利尻町へ。

利尻で一番有名な飯屋と言えば、それはもうダントツでラーメンの味楽だろう。
旨いは旨いが去年は1時間以上並んだし、横浜のラーメン博物館でも食べられるし、今年はもう良いかなと思いながら沓形入りしたものの、結局今年も味楽に来てしまった。
(独身の筆者にとってはラー博の方がハードル高いよなぁ)
結局、今年も1時間くらい並んで着丼。
残念ながら今年も米が切れていたので、チャーシュー麺と餃子を注文したがやはり安定した美味しさだった。
並んでいる時はイライラするけれど、食後の満足感は極めて高い。
ちなみにちょうど同じ時間帯に味楽にいた「うみねこゲストハウス」の常連ゲストは、待ち時間を利用して別の店で焼きカレーを食べて来たらしい。


味楽を出て、沓形港の裏の地形公園的な場所を少し散策した。実に地味な1日である。

私と同じく昨日、利尻富士に登って、うみねこゲストハウスで一緒に利尻富士温泉まで連れて行ってもらったSさんとばったり遭遇した。
行く場所が限られている離島なので、どうしても行動パターンが似通ってしまう。
Sさんはとても親しみやすい、話しやすい方だった。

利尻町、沓形には去年も来ているし、どうしても利尻富士登山が成功して燃え尽き症候群になっているので、いまいちファイティング・スピリッツが湧いてこない。
とはいえこのまま鴛泊にとんぼ返りするのも勿体無いので、少し時間が早いが利尻ふれあい温泉に来た。
去年も来てとても良かったのだ。
ホテルの温泉ながら650円とリーズナブル。
露天風呂も立てば海が見えるし、内湯の源泉かけ流しは永遠に浸かっていられる心地良いぬるさ。
筆者が一番好きな湯加減である。
結局、ふれあい温泉で1時間くらいのんびりした。

温泉に入ってもう満足したので、沓形のセコマで晩酌用のホットシェフ惣菜を買ってから帰路につく。
鴛泊にもセコマはあるけど、夏の利尻は16時にはホットシェフが売り切れになる修羅の国なので、帰る時に買っておくのである。
帰り道にサツドラの前を通ると、夏休みに合わせて本土からやってきたピザーラのキッチンカーが停まっていた。
この店員さん、うみねこゲストハウスに泊まっているのだけど、昨日はゲストハウスの前でピザを売っていた。

そして味楽と同じく1年ぶりのミルピス商店。
去年は利尻4大坂の中でも一番やばい坂を登ったあと、島一周の終盤にここに来たのだ。
実際はこの後さらに、利尻登山口までの長い坂を登らされた訳だが。

ここで一服するのが清く正しい利尻の楽しみ方である。
なおミルピスは乳酸飲料で、乳酸菌飲料とは別物らしい。


うみねこゲストハウスの常連は毎年2泊、3泊と連泊するのが当たり前なので、張り切って観光するというより日中はのんびりサイクリングや海遊びをして、明るいうちから談話室で飲んでいる人が多い。
私自身、島一周サイクリング自体は去年やっているから新鮮さは無いし、はるばる利尻まで来てローテンションなのは些か(いささか)勿体無い自覚はあるが、ともかく夜に向けてテンションを上げてゆくのが利尻での過ごし方だ。
利尻富士町に帰還


晩酌用のツマミを買い足すため鴛泊のセコマにも立ち寄ったのだが、お盆数日の品切れの反省か、ヤケクソ気味にホットシェフのカツ丼や工場生産の方だけどおにぎりを陳列していて笑ってしまった。
去年、夕方に来たらホットシェフで残ってるの白米だけだったからな〜
セコマよりもう少し沓形側にはニコットがあり、そっちで弁当とかを買うのも手だと思う。
うみねこゲストハウスならキッチンは自由に使えるので、もちろん自炊でも。

うみねこに戻ると、ちょうど夕方のフェリーで島抜けするゲストのお見送りをしていた。

電チャは1日借りているので、少し休んだら今日は自力で利尻富士温泉に行くことにした。
ただ行くだけではつまらないので、サイクリングロードを通って行く。

4大坂の先鋒、姫沼までの長い坂の途中からサイクリングロードに入れる。
去年、姫沼に行く時に前を通ったので、位置関係的に利尻富士温泉の近くまで抜けられるだろうということは感覚で分かっている。


このサイクリングロード、車は通れないのでリラックスして走れるのだが、基本的には小山の中の樹林帯を走るので基本的に景色には期待できない。
何箇所かある橋からの景色は良いんだけど。

橋からは「うみねこゲストハウス」も見える。

予想通り、利尻富士温泉やキャンプ場・ゆ〜にの近くに出ることができた。

利尻富士温泉の露天風呂は湯加減がちょうど良いし広いけど、この時期はアブやブヨが多すぎるのがネック。
今年は特に暑すぎることが関係してるらしい。
夜に行けば虫も多少は減るのでのんびりできる。

うみねこゲストハウスに戻り、セコマで買った惣菜を肴にしながら旅人同士、語り合う。
他のゲストハウスや離島の話など。島好きのご夫婦に神津島をおすすめされたので行ってみたい。

常連さんが日本酒や湯豆腐を振る舞ってくれたので、私もセコマの焼き鳥を差し入れした。
とほ宿はじめ2食付きの宿に泊まることが多いけど、シェア飯や持ち寄りの飲み会も良いものである。

この手のウェットな宿でしか得られない栄養は確実にあり、破壊された脳が回復してゆくのを感じる。
禊を済ませたらまた「うみねこゲストハウス」で語り合いたい。そう思える場所が、そう思える人があちこちにできるのが旅の醍醐味なのだろうなとしみじみ思いながら、うみねこゲストハウス最後の夜は怪しく更けていくのであった・・・